2003.09.10 パチンコで借金し退職金もつぎ込んだ男、将来悲観し父殺害

被告人は,本件被害者である実父A,実母Bの長男である。被告人は,平成15年4月,大学卒業後約30年間勤務した運送会社を,当時折り合いの悪かった上司から転勤を命じられたことを会社側の不当な人事と感じるなどして会社に嫌気が差して退職した後,職業安定所等を回ったりして再就職先を探し続けた。その間,被告人夫婦と当時中学生の一人息子の3名は,合計約300万円の退職金と妻のパート収入で暮らしていたが,一向に再就職先は見つからず,被告人は将来に不安を抱き,その憂さ晴らしなどに,唯一の趣味でもあったパチンコを毎日のようにするようになり,退職金から手にした50万円の大半をつぎ込んだほか,退職時までにパチンコでできた約20万円の消費者金融会社からの借金も,一,二か月で四十数万円になった。被告人は,同年7月14日に当時88歳のAが体調不良を訴え病院に一緒に来てくれるよう頼んできたことから,Aが入院することになるかもしれないと思い,そうなれば家に一人残されることになるBの介護が必要になると考えて,両親の住む実家に泊り込むことにし,同月18日,実家に行きAを病院に連れて行ったところ,医師から肺結核か肺がんの疑いがある旨言われ,経過観察のために肺結核の薬を処方されて実家に戻った。 それ以降,Aは,食事やトイレ,入浴の時以外はほとんどベッドに寝たままであったほか,1週間ほどして次第に食欲もなくなり,同年8月初旬には,トイレに行く際に被告人が支えて歩かせても左足に力が入らずに何度も倒れるようにもなったことから,被告人はAを病院に連れて行ったところ,薬剤性の肝障害を指摘され,同月22日まで入院した後,肺がん疑いでの手術入院のための外科病室が空くまでの間,実家に戻った。 退院後,Aは幾分筋力も回復し,何とか自力でトイレや入浴ができるようになったが,被告人は,上記病院で処方された皮膚病の塗り薬をAの体に塗ってやったり,同人がいつ何時転倒しないかと常々気にする日が続き,上記塗り薬の強烈な臭いで食欲が減退するとともに被告人自身も体に痒みが生じるようになり,寝不足等で体調も次第に悪化するなか,すべてのことから逃れたい,いっそのこと死んでしまえば楽になるかもしれないとの思いがよぎることもあった。自分が入院をし,その上父も入院することになれば,母の介護は誰がするのか,父も高齢で長くは持たないなどと,より悪い方へと考えて,両親や自分自身の将来を悲観し,両親と自分が死ねば3人とも楽になれるはずだと思い込んで,両親を殺害した後,自殺することを決意した。平成15年9月10日午前4時ころ,福岡県遠賀郡a町bc丁目d番e号所在のA(当時88歳)方において,実父である同人に対し,殺意をもって,前記電気コードを同人の頸部に巻き付けて強く絞め付けるなどし,よって,そのころ,同所において,同人を頸部圧迫により窒息死させて殺害した第2 前記第1記載の日時場所において,実母であるB(当時77歳)に対し,殺意をもって,前記電気コードを同人の頸部に巻き付けて強く絞め付けたが,同人が鼻から出血したのを見て,間もなく確実に死ぬものと誤信して放置したため,殺害の目的を遂げなかったものである。

  • 最終更新:2010-08-25 23:14:35

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