2005.01.20 ギャンブルで生活に困り放火、2名焼死

1月20日午後3時40分、青森市の無職男(58歳)を逮捕した。男は同日午前3時50分ころ青森市長島二丁目のアパート自室内に放火し、木造総2階建て住宅兼アパートの2階アパート部分を焼損させた疑い。この火災で、同アパート居住の男性2人(84歳と65歳)が死亡し、79歳男性が重傷、75歳男性が軽傷を負った。

犯行に至る経緯:被告人は,千葉県で出生し,同県内の市役所で職員として働いていたが,麻雀,競馬等の遊興費に充てるため妻に内緒で消費者金融から多額の借金をしたことで妻と離婚し,市役所も退職した。その後,被告人は,借金の取立てを免れるため住居地を転々とし,定職にも就かずに短期間のアルバイトをして生活していた。被告人は,知人の紹介で埼玉県川越市内の土木会社で土木作業員をしていた際,青森市から出稼ぎに来ていた他の作業員と親しくなり,土木会社を退職した平成7年ころ,青森市を訪れた。被告人は,同市内の旅館に宿泊しながら,実兄から仕送りを受けて無為徒食の生活を送っていたが,借金の取立ても来ないことから,生活保護を受けて同市内に居住することを決意し,平成8年9月ころから,知人に紹介された青森市Aa丁目b番地c木造亜鉛メッキ鋼板葺2階建集合住宅(以下「本件建物」という。)の2階d号室に賃借人として居住するようになり,その後2階e号室に転居し,同年11月ころから月額約10万円の生活保護支給を受けることとなった。被告人のギャンブル好きは,青森市に来てからも一向に収まらず,パチンコや競輪にのめり込み,生活保護費までそれらに注ぎ込んだ上,それだけでは足りず,市内の消費者金融から借金をするようになった。また,被告人は,実兄から再び送金してもらうようにもなったが,そのほとんどをパチンコ等の遊興費や借金の返済に費消してしまった。被告人は,平成16年12月27日に銀行に振り込まれた翌月分の生活保護費約11万円のほとんどをわずか4日余りでパチンコや競輪で費消し,手元に1万円しか残らなかったため,生活に困窮し,大家から灯油を借りた他,米等ももらい受けるまでになった。この間,被告人は,実兄に重ねて送金を依頼したが,実兄からは平成17年1月4日と17日にそれぞれ2万円が送金されただけで,18日の2万円を最後にその後の送金を断られた。被告人は,実兄からの最後の送金もその日のうちにパチンコに費消してしまった。被告人は,所持金が底をつき,実兄からの送金も断られたため,借金の返済や今後の生活について考えあぐねていたところ,同月19日午後8時ころ,自室出入口ドアと壁の隙間に封書が差し込まれた。被告人は,これを借金の督促状と思い込み,次の生活保護費を受給するまでの約10日間,金が入るあてもなかったことから,借金の返済や今後の生活について一層悩んだ。そして,被告人は,同月20日午前3時ころ,借金の返済ができなければ取立てが厳しくなり,そうなれば,借金をしていることが市役所にも分かってしまって生活保護費の支給が打ち切られ,今後の生活が出来なくなるし,唯一の楽しみであるパチンコや競輪などのギャンブルもできなくなってしまうと悲観し,それなら死んだ方がましであるから,自殺してしまおうと考えるに至った。被告人は,自殺するにあたり,身の回りの物も全て始末するためには自己の部屋に火を放って焼死するのが最良の方法であると考え,放火すれば他の部屋にも燃え移り,他の居住者を巻き添えにして死亡させるかもしれないが,それでも構わないと考え,自己の部屋に放火することを決意した。

被告人は,前記のとおり,借金の返済ができなければ取立てが厳しくなり,そうなれば借金をしていることが市役所にも分かってしまって,生活保護費の支給が打ち切られ,今後の生活ができなくなるし,唯一の楽しみであるパチンコや競輪などのギャンブルもできなくなってしまうと悲観し,それなら死んだ方がましであるから,甲ほか6名が居住している青森市Aa丁目b番地c木造亜鉛メッキ鋼板葺2階建集合住宅の2階e号室の自室に放火して自殺しようと考え,その際,他の部屋にも燃え移り,他の居住者を巻き添えにして死亡させるかもしれないが,それでも構わないと決意し,平成17年1月20日午前3時50分ころ,上記自室において,絨毯敷きの室内中央辺りに半分に折りたたんで置いた膝掛け毛布から,絨毯及び同室内窓側に3つに折り畳んで置いた布団にかけて,同室内にあったポリタンク内及び石油ストーブの灯油カートリッジ内の灯油(合計で少なくとも約10リットル程度)をすべて撒き,前記毛布に所携の簡易ガスライターで点火して放火し,同室内の柱,天井等に順次燃え移らせ,よって,本件建物の所有者甲及び妻乙,丙他賃借人4名が現に住居に使用している本件建物の2階部分を全焼させて焼損するとともに,上記日時頃,本件建物2階において,丙(当時84歳)及び丁(当時65歳)をそれぞれ火傷により死亡させ,戊(当時79歳)に入院加療約23日間を要する気道熱傷,熱傷等の傷害を負わせた。(量刑の理由)本件は,ギャンブルにのめり込んで生活保護費や借金等の大半を費消して生活に困窮した被告人が,借金の返済や今後の生活に悩んで将来を悲観し,自殺を決意すると同時に身の回りの物も一緒に処分するために,本件建物内の自室に放火し,本件建物の2階を全焼させるとともに,他の居住者2名を死亡させ,1名に傷害を負わせたという事案である。被告人は,パチンコや競輪といったギャンブルにのめり込み,青森市からの生活保護費や消費者金融からの借金の他,実兄から送金してもらった金銭のほとんどすべてをギャンブルに充てたため,生活に困窮し,将来を悲観して本件犯行に及んだものであり,本件建物が古い木造家屋で自己の部屋に放火すれば建物全体に火が燃え移ることを認識し,かつ,他の居住者の生命を奪う可能性もあることを十分に認識した上での犯行であることに鑑みれば,その動機は安易かつ身勝手で自己中心的であり,酌量の余地はない。犯行態様も,住宅密集地における集合住宅への放火であり,かつ,本件建物は築40年以上の古い木造家屋であって,火の回りの早いことは容易に認識できたこと,にもかかわらず,ポリタンクや石油ストーブのカートリッジ内に残っていた少なくとも約10リットルもの灯油全部を撒いた上で放火していること,被告人は本件建物の2階部分に身体の不自由な人や高齢者が居住していることを熟知していたこと,犯行直前に自室のドアを開けて廊下を見た際,他の居住者が寝静まっていることを認識し,かつ,本件建物の居住者らが寝静まっている時間帯に本件犯行を敢行したことからして,はなはだ危険かつ悪質である。被告人が本件犯行に使用した灯油は,本件建物の大家の妻が真冬に灯油も買えないほど金銭に困窮している被告人を心配して暖を採ることができるようにとの配慮から貸してくれたものであり,被告人はまさに恩を仇で返したものである。本件被害者2名は突然生命を奪われることにつき何らの落ち度もないのであって,その尊い命が失われたことは,誠に遺憾というほかない。燃えさかる居室内で,足が不自由なため逃げたくても逃げられず,隣室との境の壁を必死に叩いて助けを求めるしかできずに命を絶たれた被害者丙,逃げる途中で力尽きて倒れ,猛烈な火で焼かれて死んでいった被害者丁の無念さは計り知れず,その遺族らの憤りは大きい。また,被害者戊の傷害の程度も決して軽いとは言えない。さらに,本件犯行により本件建物の2階部分がほぼ全焼した上,隣接住宅にも財産的被害が生じている他,住宅密集地であることによる公共の危険の発生も軽視できず,近隣住民が多大な恐怖を感じたことは容易に想像できる。被告人は,本件犯行後,火の回りが思いのほか早かったことに驚いて我先にと逃げ出したものであるが,被告人の犯行に気付かずに寝ている他の居住者,隣接住宅の居住者らに対し,火災を知らせることもせず,消火活動や119番通報すらせずに逃げており,非難されてしかるべき行為である。

  • 最終更新:2010-08-18 08:00:58

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