2007.03.09 退職金を浪費し、さらに遊ぶ金欲しくて強盗殺人

無職田中光雄被告は2007年3月9日午前10時10分ごろ、強盗目的で静岡市の質店に押し入り、店主の男性(当時68)の腹や胸を持っていたレジャーナイフで何度も突き刺して失血死させたが、現金を見つけられず、何も取らずに逃走。殺害直前には逃走用のため、近くのパチンコ店駐輪場に止めてあった自転車(約5000円相当)を盗んだ。 田中被告は2006年末に退職後、食事に困っていた。3月上旬から路上生活を始めていた。(無期懲役判決リスト 2007)
2007年10月3日の初公判で、田中被告は起訴事実を認めた。弁護側は、「被害者に抵抗されたため、殺害直前に殺意を持って刺した」と、殺意を抱いた時期などについて争う姿勢を示した。 10月10日の論告求刑で検察側は「被害者には全く落ち度がなく、動機は路上生活から抜け出して楽な生活をしたいという身勝手なもの。犯行は計画的で確定的殺意を持って殺害した」と指摘した。被告がいつ、どのような内容の殺意を持ったかについて、「自筆の上申書の中で犯行前日に野宿した際、『もし主人があばれたりすればナイフで最悪殺して金をとろうときめました』と記載している」と指摘。犯行時に確定的殺意があったとした。そして、「遺族は重い処罰を望んでおり、実父母が不明で養父に暴力をふるわれ育ったという被告の不幸な生い立ちを考慮しても、無期懲役が適切」と述べた。 弁護側は最終弁論で「被告は犯行時、店主がよもや反抗してくるとは思っていなかった」と述べ、ナイフを所持していたのはあくまで店主を脅すためだったと主張。「被告が殺意を抱いたのは被害者に抵抗されてもみ合うなどした後だった」と計画性を否定。さらに「背景には被告の生い立ちなどもある」などと刑の減軽を求めた。 田中被告は、公判の最後で「自分の身勝手で、申し訳ない。男性には、心からご冥福を祈りたい」と頭を下げた。 長谷川裁判長は「野宿生活に耐えられなくなっての短絡的、身勝手極まりない犯行で、周到に準備されている。被害者を手加減なく刺しており、様態も冷酷かつ執拗」と述べ、求刑通り無期懲役を言い渡した。 判決で長谷川裁判長は動機について、「新幹線のグリーン車を利用しての観光やパチンコなどで退職金65万円を無計画に浪費し、余儀なくされた野宿生活から抜け出すため、強盗して大金を得ようとした」と言及。 被告の男が殺意を持った時期については、(1)12ヶ所の大きな刺し傷のうち、胸など5カ所で凶器に使われたレジャーナイフの刃体の長さ(約9.5センチ)を上回る10センチの深さがあり、力いっぱい突き刺した形跡がうかがえる(2)「抵抗されれば殺して金を取ろう」などと記した上申書の内容は自然で信用性が高い―などの理由から、強盗を計画した犯行前日の時点で「条件付き確定的殺意」が認められるとし、「店主ともみ合っている中で殺意が生じた」とする弁護側の主張を退けた。 情状面で弁護側が酌量を求めていた被告の生い立ちなども、判決は「反省の情や強盗は未遂だったこと、年齢や生い立ちを最大限考慮しても情状酌量の余地はない」とした。(無期懲役判決リスト 2007)

  • 最終更新:2010-08-04 02:10:08

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