2009.05.07 給料をパチンコにつぎこみ、金に困り強盗殺人

和歌山市の無職赤松宗弘被告は2009年5月7日午後4時50分頃、自宅隣にある無職女性(当時68)宅に侵入し、ネックレスなど約29万円相当を盗んだ。しかし帰宅した女性に発見されたため、首をタオルなどで絞めて殺害した。赤松被告は午後6時頃、市内のリサイクル店で盗んだ指輪など16点を約14万円で換金した。赤松被告には、消費者金融などから約30万円の借金があった。配管工として働いており、3月末と5月1日に給料を受け取ったが、パチンコにつぎ込み、事件直前の所持金は数十円だった。事件の1ヶ月前に失業していた。9日に女性の遺体が発見された後、隣に住む赤松被告の所在がわからなくなった。心配した知人の男性が10日、赤松被告の携帯電話に電話したところ、赤松被告が「盗みに入り、見つかったので殺した」と話した。この男性の証言などから、赤松被告が浮上した。捜査本部は11日に殺人容疑で逮捕状を取り、富山県黒部市のJR黒部駅構内に1人でいる赤松容疑者を発見。富山県警黒部署に任意同行し逮捕した。(無期懲役判決リスト2009年度)
起訴事実が強盗殺人では初の裁判員裁判。和歌山地裁は7月27日、裁判員候補者69人に呼び出し状を送付。呼び出しを取り消したり、呼び出し状が届かなかった人を除く41人のうち、37人が呼び出しに応じ、14日午前に裁判員6人(男性5人、女性1人)と補充裁判員2人が選任された。起訴内容に争いはなく刑の重さが争点となった。9月14日の初公判で赤松被告は「間違いありません」と起訴内容を認めた。9月15日の証人尋問で検察側証人である被害者の姪が検察側の質問に対して、「被告におばと同じ痛みを味わって頂きたい。被告を死刑にしてほしい」と訴えた。また男性裁判員から「おばにしてあげたかった事は何ですか」と聞かれると、「自分の子供と一緒に旅行などをしたかった。もうお墓に手を合わせる事くらいしか出来ない」と涙声で答えた。一方、午後の被告人質問では、6人の裁判員全員が質問し「空き巣に入ったとき袋を用意したのは何故か」「事件後大阪の兄に会いに行ったのは何故か」「犯行後自宅で寝泊りしていたのはどういう心境か、よく眠れたのか」「被害者が友人と帰宅していたら、いっしょに殺していましたか」などと問いただし、被告は「よく寝られませんでした」、「謝って逃げていたと思う。1人で帰ってきたので殺害した」などと答えた。同日の論告求刑で検察官は「強盗殺人というと、物を奪うために人を殺したという場合を想像されると思います」と切り出し、刑法上は今回のような口封じの犯行も「同じように強盗殺人罪が成立する」とかみ砕いて説明した。そして「女性の口封じの為に殺した強盗殺人事件で、執拗、残忍で、動機に同情の余地は全くない。入手した金でパチンコをするなど反省もみられない」と無期懲役を求刑した。裁判員裁判で無期懲役が求刑されたのは初めて。同日の最終弁論で弁護側は犯行の計画性を否定した上で、「当初は空き巣目的だった突発的な犯行で、被告には更生の余地がある。厳しい刑を下すことだけが市民感覚を取り入れることではない、無期懲役は重すぎる」として、「懲役25年が相当だ」と裁判員に意見を述べた。判決日の午前中、裁判員と裁判官による最終評議が行われ、午後に判決が言い渡された。成川裁判長は判決で「現場に遺体があるのに、隣接した自宅で日常生活を送っていた」と述べ、裁判員からの被告人質問の内容を踏まえ、事件の悪質性を指摘した。そして「犯行は非常に執拗、残忍で悪質。奪った貴金属を換金して平然と買い物やパチンコをし、逮捕されるまでひたすら逃げようとした」と非難した。「無残に命を奪われた被害者の恐怖や無念は察するに余りあり、死刑を望む遺族の厳しい処罰感情は当然」と指摘。計画性の低さや反省を考慮した上で「有期懲役の選択が可能としても、被告には無期懲役が相当」と述べた。言い渡し後、成川裁判長は「裁判員と裁判官からのメッセージ」として「現実から逃げず、被害者の冥福を祈りながら罪をきっちり償ってほしい」と説諭。被告は「はい」とうなずいた。判決後、裁判員6人と補充裁判員2人の全員が記者会見。それぞれ「いい経験になった」「参加してよかった」などと充実感を口にした。しかし「意見はどれぐらい判決に反映されたか」という質問に対しては、地裁の職員が守秘義務に反するとして回答を制止した。また「法廷や評議で刑の重みについて説明を受けたから(刑期について)判断できた」と口をそろえたが、30代の女性裁判員は「素人の自分たちが決めてよいのか疑問が残った」と苦悩をのぞかせた。会社員の男性(47)は「帰宅後も被告のことを考え寝られなかった」と疲れた表情だった。弁護側は控訴について明言しなかったが、藤井幹雄弁護士は「3日間の公判は短い。(地裁が)審理より進行を管理している面が強かったのでは」と苦言を呈した。(無期懲役判決リスト2009年度)

  • 最終更新:2010-08-03 01:46:35

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